
緑内障は、日本人の後天的な失明原因の第1位に挙げられる目の病気です。40歳以上では20人に1人、60歳以上では10人に1人が発症すると推定されています(*1)。初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに視野が徐々に狭くなっていくのが特徴です。
緑内障の原因としては眼圧の上昇により視神経が傷んでくることがよく知られていますが、眼圧が正常範囲である「正常眼圧緑内障」も少なくありません。近年では「酸化ストレス」が視神経の障害に関わっていることも注目されています。
2025年に発表された海外の研究(*2)では、抗酸化作用の高い食事をとっている人ほど、緑内障のリスクが低いことが報告されました。アメリカの国民健康栄養調査に参加した成人男女約5000人を対象に、食事内容から「食事性酸化バランススコア」という指標を算出し、体内の酸化を抑える栄養素をどれだけ摂取しているかを評価したものです。対象となった栄養素には、「ビタミンC・E、カロテノイド、ビタミンB群、葉酸、食物繊維、マグネシウム、亜鉛、セレン」などが含まれていました。
分析の結果、スコアが1単位高くなるごとに緑内障リスクは約4%低下していました。さらに、スコアが上位25%の範囲のグループは、下位25%のグループに比べて緑内障リスクが61%低いこともわかりました。この関連は特に喫煙経験のある人で強く見られ、酸化ストレスの影響を受けやすい人ほど食事の質が重要になる可能性が示されました。
抗酸化作用のある栄養素の中でも、ルテインとゼアキサンチンは「目の健康に役立つ栄養素」として知られてきました。いずれも天然の色素(カロテノイド)で、ヒトの目の奥にある黄斑部に集中的に存在し、強い光やブルーライトを吸収して網膜を守る働きをしています。
私たちの体は呼吸をするだけでも活性酸素を生み出し、加齢、紫外線、ストレス、慢性炎症などが加わると酸化ストレスが増加し、細胞の老化を進めます。長時間の光刺激や酸化ストレスの増加で、目は特に大きな負担を強いられている臓器。ルテインとゼアキサンチンは〝スマホ時代の目を守る栄養素〟とも言えるでしょう。なお、ルテインはヒトの脳内にも存在する数少ないカロテノイドであり、脳との関係も注目されてきています。
食品ではケール、ほうれん草、ブロッコリー、とうもろこし、卵黄などにルテインが多く含まれます。脂溶性のためオリーブオイルなど良質な油と一緒に摂ることで吸収が高まります。
もちろん、特定の栄養素だけで緑内障を予防できるというわけではありません。大切なのは、野菜や果物、魚、海藻類、ナッツ類などをバランスよく取り入れ、総合的に抗酸化力の高い食生活を心がけることです。
また、40歳を過ぎたら眼圧測定を含む定期的な眼科検査でチェックしていくことも重要です。食事と定期検査の両方を意識することが、将来の視力を守る第一歩です。
*1 日本眼科医会ホームページ
*2 Eye (Lond). 2025 Sep;39(13):2527-2533.
Related Article