ビタミンCは人類の歴史で最も早くから注目された栄養素の一つです。15世紀半ばから始まった大航海時代に、船乗りが謎の出血に悩まされることが多く、長い間その原因も不明のままでした。ライムなどの柑橘類を摂るとこの症状が起こらないということが理解されたのは、1920年頃になってからと言われています。今では、船乗りが悩まされた出血傾向の病は「壊血病」であり、その症状を治したライムに含まれていた成分は「ビタミンC」であることが知られています。ビタミンCはコラーゲン繊維を作るために欠かすことのできない重要な栄養素ですので、これが不足した場合には血管壁がもろくなり、出血を起こしやすくなってしまうのです。
ビタミンCの働きはコラーゲン繊維の合成を助けるほか、活性酸素の除去、肝臓の解毒酵素の活性化、神経伝達物質のノルアドレナリンの合成促進、鉄分やミネラルの吸収促進、免疫機能の活性化など、多岐にわたります。また、ビタミンCは眼球内の水晶体や副腎皮質に多く含まれることから、これらの臓器で重要なはたらきをしていることが推測されています。
「風邪の予防にビタミンC」と記憶している人も多いと思いますが、この情報の発信源は、二度のノーベル賞を受賞したライナス・ポーリング博士の発言からと言われ、1980年代から広く知られるようになっています。近年の研究でも、毎日ビタミンCを摂取していると免疫力を維持し、ウイルス感染の予防になることが確認されています。ちなみに、こうしたビタミンCの効果は喫煙をしないグループでより顕著に現れていたということです。
他にも、ビタミンCの摂取量が不足している場合、糖尿病のリスクが増加するため、糖尿病予備軍や糖尿病患者にとってビタミンC摂取が有益とする報告があります。さらに、血液中のビタミンC濃度が高いほど死亡率が低い傾向があるという報告もなされています。
犬や猫などの動物は体内でビタミンCを作り出すことができますが、霊長類である人類はビタミンCを作る酵素を約5000万年以上前に失っています。このため食品からビタミンCを定期的に補給する必要があります。同じ霊長類のゴリラはせっせと木の葉を食べていますが、ゴリラの食べる木の葉に含まれるビタミンCの総量は体重換算すると人間の成人で約3〜4gに相当します。
ビタミンCは野菜や果物に多く含まれています。これらをあまり食べないという人は、ビタミンC不足に注意しましょう。加熱調理によってビタミンCは壊れてしまいますので、新鮮な生の野菜や果物から補給することが理想です。
サプリメントとして摂取する場合には、1回につき1g(1000mg)程度を目安に、体調に合わせて増減させることがおすすめです。過剰摂取の副作用には下痢があるため、お通じの状態がバロメーターになりそうです。疲労を感じるときには就寝前に2〜3gを服用すると翌朝スッキリと目覚めることができるでしょう。なお、ビタミンCは水溶性ビタミンのため、服用後3〜4時間で体外へ排泄されてしまいます。このため一度に摂るのではなく、朝・昼・晩とこまめに補給するのが賢い摂り方です。
寒い冬はビタミンC不足になりやすい時期でもあります。積極的な補充で風邪を引かないように過ごしましょう。
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