美容や健康に関心の高い方は「アスタキサンチン」という成分の名前を一度は聞いたことがあるでしょう。アスタキサンチンは鮭やイクラ、エビ、カニなどに含まれる赤い脂溶性の天然色素で、自然界に存在する最も強力な抗酸化物質の一つです。もともとは藻類や酵母に含まれる成分です。鮭は白身の魚ですが、藻類を食べることによってアスタキサンチンを体内に蓄え、きれいなピンク色の身となっています。また、エビやカニの甲羅をゆでると赤く変色するのは、たんぱく質とアスタキサンチンとの結合が熱によって取れ、本来の色が出るためです。
抗酸化物質とは、いわば体を「サビ」から守る成分です。私たちの体は、加齢や紫外線、ストレスなどによって活性酸素が増えると、細胞が傷つき、老化や病気の原因になることがあります。アスタキサンチンは、この活性酸素を除去する働きが非常に強く、体の内側から健康と若々しさを守ってくれるのです。
近年、アスタキサンチンの作用が注目され、さまざまな研究で効果が検証されています。美容面では、肌のしわやたるみ、乾燥を改善する作用が確認されています。紫外線によるダメージから肌を守るということで「飲む日焼け止め」と呼ばれることもあるほどです。アスタキサンチンを約3〜4か月間摂取した被験者の多くが、肌の保湿力の向上や弾力性の回復を実感したという報告もあります。
健康面では、目の疲れやドライアイの改善に役立つことがわかってきました。パソコンやスマートフォンによる目の酷使が多い現代人にとっては、うれしい効果です。
さらに、最近ではアスタキサンチンが脳の健康にも良い影響を与えるという研究も進んでいます。脳には、脳の血管と脳の組織との物質の行き来を制限する「血液脳関門」と呼ばれる器官があるのですが、アスタキサンチンはこの血液脳関門を通過し、脳に届くことがわかってきました。まだ研究途上ではありますが、脳内の酸化ストレスを軽減することで認知機能や記憶力の維持に貢献する可能性が示されています。
そのほかにも、動脈硬化や高血圧の予防、筋肉疲労の回復、関節の炎症軽減、さらには女性ホルモンのバランス調整など、幅広い分野でアスタキサンチンの抗酸化作用が注目されています。
アスタキサンチンは、天然由来でありながら多機能な成分です。食事で鮭や鯛、エビ、カニなどを摂取するのが基本ですが、食事以外でもサプリメントや化粧品を含めてシーフードアレルギーのある方は十分な注意が必要です。上手に取り入れることで、日々の健康と若々しさをサポートしてくれる心強い味方となるでしょう。
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