
年齢を重ねると、筋肉が減ったり、筋力が弱くなったりする「サルコペニア」という状態が起こりやすくなります。サルコペニアが進むと、歩きづらくなったり、転びやすくなったりして、さらに「フレイル」と呼ばれる虚弱状態や、介護が必要になるリスクも高まります。将来の健康を保つためにも、全ての年代で、筋肉を維持・向上することはとても重要な課題です。
では、どうしたらよいのでしょうか。筋力トレーニングを継続していくことが一つの手段ですが、筋肉のたんぱく質は常に分解・合成を繰り返しており、材料となる栄養素がなければ、うまく筋肉を作ることができません。トレーニングを続けるためにも、日々の食事でしっかりたんぱく質を補給することが重要です。
筋肉の材料になるのはたんぱく質ですが、たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されています。アミノ酸のうち、体内で合成できるアミノ酸は11種類、体内で合成できないため食事から補給する必要がある「必須アミノ酸(EAA)」が9種類あります。EAAの中でも「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」(バリン、ロイシン、イソロイシン)が筋肉に最も多く存在します。近年、BCAAが筋力アップや運動パフォーマンスの向上に不可欠な栄養素として注目されています。
様々な年齢の人の血液を調べ、アミノ酸が筋肉や体内の炎症にどう関わるかを調べた研究があります。これによると、高齢者ではBCAAやEAAの量が若い人に比べて少なくなっていました。また、BCAAやEAAが多い高齢者ほど、筋肉量や握力が高いこともわかりました。つまり、BCAAやEAAは、年をとっても筋肉を保つために重要だということです。
一方で、高齢者では、BCAAやEAAが多いほど、「CRP」や「IL-6」という体の炎症を示す物質も高くなる傾向が見つかりました。年をとると少しずつ体内で「慢性炎症」が進むことが知られており、この炎症が老化やサルコペニアに密接に関係すると考えられています。
つまり、BCAAやEAAは本来、筋肉を作るために必要なアミノ酸ですが、高齢になると筋肉の分解が進み、血液中にこれらのアミノ酸が流れ出て炎症に関わる可能性もあることが示唆されました。単に筋肉の量だけが問題なのではなく、体内の炎症や老化の進み具合によっても、血液中のアミノ酸の量は変化しているのです。年齢や体の状態などによって、最適なアミノ酸の量も違ってくる可能性があります。
血液中にBCAAがあっても、筋肉にうまく取り込めず、使われにくくなることもあります。これは、BCAAを筋肉に運ぶたんぱく質やBCAAを利用する酵素が年齢とともに減ってしまうためだと考えられています。
これに対して、ライチの果実から抽出されたポリフェノールに着目し、BCAAの働きを助ける役割があることを報告した研究もあります。体内で吸収されやすいように低分子化されたポリフェノール成分を使って、様々な機能性の研究が進んでいるということです。こうした機能性成分とBCAAとを組み合わせて摂ることで、筋肉の衰えを防ぐ可能性も期待されます。
ただし、いずれもそれだけで筋肉が維持できる〝魔法の薬〟ではありません。筋肉維持のためと闇雲にBCAAや特定の成分ばかり摂取しても、うまく利用できなければかえって炎症や老化を促進してしまう可能性も考えられます。体内では様々な栄養素が互いに作用し合って初めて健康が保たれますから、たんぱく質を十分に含む栄養バランスの取れた食事、日常的な運動、良質な睡眠、こまめな水分補給といった基本的な生活習慣が前提であることを忘れないでください。そのうえで、運動する際に、必要な成分を適度に組み合わせると良いのではないでしょうか。
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