糖質制限、高たんぱく食など、健康になるための様々な食養生が唱えられています。一体どれが自分に合うものなのか、迷っている方も多いのではないでしょうか。
いくつかの食事法を比較した興味深い研究があります。低糖質食、菜食主義、高たんぱく食、バランス食の4つのグループに分け、脳の機能の変化について調べたものです。その結果、バランスの取れた食事をしているグループは、他の3つのグループと比較して精神的健康度が高く、認知機能が優れていたことがわかりました。
この研究では、甘味や脂肪分が多く栄養価の低い食べ物に慣れている人々に対して「時間をかけて砂糖と脂肪の摂取を減らすことで、人々は自然に健康的な食物を選択するように方向づけられる」と、徐々に食事を変えていく必要性を強調していました。経験した人はおわかりかと思いますが、糖分や脂肪分の多いいわゆるジャンクフードは中毒のように食べ慣れてしまうものです。一方、栄養バランスが取れてくると、自然とそれらを欲しなくなります。食事は「習慣」がものをいう面もあるのです。
また、この論文の著者らは、「健康的なバランスの取れた食事を幼少期から始めることが健康的な成長のために不可欠」ということにも言及していました。人類は、その歴史から見ても雑食であることは間違いありません。肉、野菜、穀類、いずれも重要な食材ですが、どれかに偏ることは体だけでなく「脳の健康」という視点からもリスクがありそうです。
日本でも古くから先人達の養生訓が残されていますが、共通するのは「過食を避けること」「たんぱく源として小魚を中心とし、肉類を少なめにすること」など。現代には現代の養生訓がありますが、一般論としては以下のような点が柱になります。過食が続いたら、ときには断食(ファスティング)などで体調を整えるのも有効でしょう。
これらを実践しやすく、栄養バランスを摂りやすいのは「和食」です。「一汁二〜三菜」を基本とし、汁物、主食、主菜、副菜の中で栄養価の高い旬の野菜や魚、肉、豆類、きのこなどを組み合わせれば、たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル・食物繊維を満遍なく摂ることができます。動物性脂肪は少なめで、魚、野菜や海藻類が豊富に使われ、発酵食品の種類が多いのも和食の特長です。
毎日完璧にバランスを取らなければならないわけではありません。特別な日には豪華な食事をするのも良いのです。しかし、栄養価の低い食事に慣れてしまうか、必要な栄養素を満遍なく摂れるバランスの取れた食事がベースにあるかで、将来の健康度は大きく違ってきます。特に幼少期からどんな食事を摂取するかが、大人になってからの健康も左右することを忘れてはならないでしょう。より良い食養生は、一回の食事の問題ではなく、人の一生にとって極めて重要なことなのです。
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