
健康を意識してバランスよく食べていると思っている人でも、ほとんどの現代人はビタミンDが不足しているということをご存じでしょうか。秋から冬はさらに生成されにくく、1年で最も血液中のビタミンD濃度が低くなります。日光の紫外線を浴びて皮膚で作られるビタミンDは日照の影響を強く受けるからです。
食べ物からのビタミンDの摂取量が同じでも、夏と冬で血液中のビタミンD濃度が異なるということが研究からわかっています。また、緯度が高く冬の日照時間が短い地域に住んでいる人は、緯度が低い地域よりも血中ビタミンD濃度が低いという報告もあります。
ビタミンDは健康にとって必要不可欠な脂溶性ビタミンの一つで、骨の代謝に関わるほか、動脈硬化、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病、運動能力、うつ病や認知症といった脳の健康、歯の健康にまで関わります。中でも特筆すべきは、体内の慢性炎症を防ぎ、免疫をコントロールする役割を担っていること。ビタミンDは全身の細胞に影響を与えて健康の土台をつくる〝スーパービタミン〟ですから、不足すればさまざまな不調を招きやすくなるのです。冬の感染症予防にも重要ですし、日照時間が短くなる季節は精神的なうつ症状も増えるとされていますから、不足しているビタミンDを補充することは、その予防策にもつながるでしょう。
ちなみに、スウェーデンの大規模研究によると、日光浴が少ないグループでは、日光浴が最も多いグループよりも、がんに関連した死亡リスクが40%高いことがわかりました。これは日光浴そのものの健康効果も考えられますが、紫外線を浴びることによってビタミンDが増えることも影響しているでしょう。
紫外線を浴び過ぎれば皮膚への弊害もありますが、カットし過ぎるのも問題です。適度に日光を浴びることも健康にとって大切なことなのです。
研究などで血液中のビタミンD濃度を測定する場合は、食べ物からと皮膚からの双方のルートを反映する「25(OH)D」(合成されたビタミンDが肝臓で代謝されてできるもの)について調べます。実際に25(OH)Dが体の中で働く際には、もう一段階の代謝を経て、活性型ビタミンDになります。これが脳を含めた全身にある受容体に取り込まれて働きます。
日本でも数年前から血中ビタミンD濃度を調べる検査が保険適応になっていますので、自分の血中ビタミンD濃度を知りたいという人は一度、調べてもらうと良いでしょう。ただし、施設によって「25(OH)D」を調べる場合と「活性型ビタミンD」を調べる場合があるようです。血中25(OH)D濃度の方が正確です。
日照時間が減る秋から冬の時期は、より意識して積極的にビタミンDを補充する必要があります。鮭や青魚、きのこなどビタミンDを多く含む食品を積極的に取り入れ、魚をあまり食べない人は、食べる回数を増やしましょう。また、ビタミンDを強化した食品も出回っていますので、含有量を確かめたうえで、こうした食品を利用するのも良いでしょう。個人差もありますが、1日に摂取したいビタミンD量は「25〜50μg(=1000〜2000IU相当)」が目安です。
食生活の改善だけで目標量を達成することは難しいため、血中濃度が低い人の場合には、サプリメントで補充するのがおすすめです。「意識してなるべく日光を浴びる」「この時期だけでもサプリメントを利用する」など、時期に合わせた強化策を講じましょう。
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