糖尿病、脳卒中、心筋梗塞はいずれも日本で罹患数の多い重大な生活習慣病です。これらは互いに深く関連していて、複合する場合も少なくありません。これらのうち2つ以上の罹患歴があると、単一の疾患を持つ場合に比べて死亡リスクが4~7倍も高いことが指摘されています。さらに、身体機能の低下や精神的ストレスなど様々なリスクも高まる可能性があります。
近年、こうした多疾病罹患が注目されつつありますが、3疾患の個々のリスクについては多くのエビデンスが存在する一方、複数の疾患の罹患歴がある場合についてはほとんど解明されていませんでした。
カフェインについても、適度に摂取することが糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病に対して保護効果があることは、既に多くの研究で確かめられていますが、多疾患に罹患するリスクに注目した研究も発表されました。
50万人以上を対象にしたこの研究では、習慣的なコーヒー、紅茶、カフェインの摂取がリスクを大幅に低減させ、保護的な効果を示すことが確認されました。全く摂取しない人や1日100mg未満のカフェインしか摂取していない人と比べ、200~300mg(コーヒー1日3杯程度)のカフェインを摂取している人が最も低いリスクを示したということです。
カフェインはコーヒー、紅茶だけでなく、緑茶にも微量に含まれています。また、カフェインとは違う観点ですが、コーヒーにはクロロゲン酸、緑茶にはカテキンといった抗酸化物質も含まれ、これらによる健康効果も期待できます。1日3杯程度、コーヒーを含めた「お茶を飲む習慣」を大切にされるとよいでしょう。甘いものを食べるときにコーヒーや緑茶と一緒に摂ると糖質の吸収を緩やかにするという指摘もあります。
「カフェインを摂ると、夜、眠れない」という人もいるでしょう。100人の健康な人を対象に2週間、特定の日にカフェイン入りコーヒーを飲むか、避けるかを指示して変化を解析した研究によれば、カフェイン入りコーヒーを飲んだ日は睡眠時間が平均で約36分短くなりました。
また、睡眠に影響が出るかどうかは人によって違いがあり、カフェインを早く分解できる遺伝子変異を持つ人では睡眠不足になることが少なく、カフェインの代謝が遅い遺伝子変異を持つ人では睡眠不足が多く見られました。
カフェインが体内で代謝されて半分量になる時間は6〜8時間とされています。22時から24時ごろに就寝するとすれば、16時以降はカフェイン入りのコーヒーやお茶はあまり飲まないほうがよさそうです。カフェインは適量であれば認知機能の維持や疾患予防に役立つメリットがあります。摂取する量やタイミングを意識して、賢く取り入れましょう。
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