「タウリン」という栄養素は、エナジードリンクに含まれている成分でもあり、名称はよく知られています。しかし、どういう健康効果があるのかについては意外と知られていません。近年、タウリンの効用についても徐々に研究が進んできました。ちなみにタウリンの語源は、ギリシャ語の牛を意味する「タウロス」とされています。それは、タウリンが牛の胆汁から分離されたことに由来します。
タウリンは、含硫アミノ酸の一種です。含硫とは硫黄を含むという意味で、硫黄成分は肝臓の解毒機能を促進する働きがあり、新陳代謝を活発にする作用があります。
また、タウリンはアミノ酸の一種ですが、たんぱく質を作る素材にはならないため、機能性アミノ酸として分類されています。タウリンは人体内で産生することができるため、必須アミノ酸ではないものの、成長期の子どもやベジタリアンのように摂取栄養素に偏りがある人には補給が必要となる場合もあります。このため、タウリンを半必須アミノ酸とする意見もあります。
タウリンは、肝臓、心臓、筋肉、脳など多くの組織に存在しており、その働きは多岐にわたります。いずれも細胞代謝の基盤を支える重要な働きです。このため激しい運動をした後の回復機能を改善する働きがあるとされ、多くのエナジードリンクにタウリンが添加されています。
タウリンの働きの中でも、カルシウム調節、血圧低下、抗酸化作用、抗炎症作用など、心血管の健康を支える多面的な作用は、世界で多くの人が亡くなっている心血管疾患を予防・改善し、健康寿命を延ばすために非常に重要です。最近の研究結果からも、タウリンは高血圧の予防や心機能の改善において非常に有用であることが示唆されました。
タウリンは胆汁酸の生成を促進して肝臓の脂質代謝をサポートし、脂肪肝の改善にも効果が期待されます。血糖値の調整など、メタボリックシンドロームの改善に関与することも確認されています。さらに、タウリンは神経細胞の安定化や神経伝達物質の調整に関与し、神経系を保護する働きもあります。詳しくは今後の研究による解明を待たなければなりませんが、認知機能のサポートやうつ病への可能性も期待されています。
心血管疾患のリスクが高い人だけでなく、健康を維持したい人にとっても、タウリンを積極的に補充することにはメリットがあるようです。
タウリンはイカやタコなどの魚介類、鶏肉などに多く含まれています。植物にはほとんど含まれていませんので、野菜中心の生活では不足する可能性もあります。
ただし、タウリンを補給しようと日常的にエナジードリンクに頼るのは禁物です。エナジードリンクには糖がたっぷり含まれているからです。バランスの取れた食生活の中にタウリンを活用することで、より健康的な心血管機能を保ち、生活の質を向上させることが期待できるのです。今後もさらなる研究が進むことで、タウリンの具体的な活用法がより明確になるでしょう。
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