私たちの体には約30gのマグネシウムが含まれます(成人の場合)。このうち約60%が骨に、約30%が筋肉に存在し、血液中を流れるマグネシウムは約1%にすぎません。マグネシウムは多岐にわたる働きをするミネラルですが、中でも重要なのは、細胞がエネルギーを作り出すのを助ける働きです。つまり、マグネシウムがなければ細胞はうまく活動することができないのです。
とても重要な栄養素であるにもかかわらず、現代人の食生活ではマグネシウムが不足しやすいことが指摘されています。摂取量の不足だけでなく、ストレスや加齢などさまざまな要因で失われる量も多いからです。
マグネシウムには筋肉を緩める働きもありますので、不足すると筋肉が収縮したまま戻りにくく、痙攣を起こしやすくなります。特に高齢になると明け方に「足をつる」人が少なくありませんが、これはマグネシウム不足のサインかもしれません。
また、マグネシウムの不足は、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、冠動脈性心疾患、脳卒中など、幅広い疾患のリスクとも関連しています。十分なマグネシウムの摂取は、心筋梗塞後や脳卒中後の死亡リスクを下げるのに役立つことも報告されています。
ストレスとマグネシウム、うつとマグネシウムなどの関連も指摘されています。これまでの研究から、ストレスに対してマグネシウムと高用量のビタミンB6を併用すると相補作用がある可能性が報告されていたのですが、最近の研究でも、「マグネシウムの補給はストレス軽減に効果的であり、重度のストレスを持つ人においてはビタミンB6を併せて摂取するとさらに有益」という傾向が示されました。
残念なことに、マグネシウムはストレスがかかると体外へ流失してしまいます。過度な運動や暑さ・寒さなどの環境もストレスとなり、マグネシウムが失われやすい状態になりますので、意識して積極的にマグネシウムの補給を心がけましょう。よく足がつる方やストレスが大きいと自覚される方はもちろんですが、加齢によっても減少しやすくなりますので、全ての方に意識して摂取してほしいミネラルです。
マグネシウムは植物の葉緑素(クロロフィル)に存在しています。食品では緑の野菜や海藻類に多く含まれます。ほうれん草や小松菜、ケール、ブロッコリーなどの緑色の濃い野菜には多いのですが、色の薄い葉物野菜にはさほど含まれていません。青汁や抹茶などにもマグネシウムが多く含まれます。
他に、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、種子類(かぼちゃの種、チアシード)、全粒穀物(玄米、全粒パン)、豆類(黒豆、ひよこ豆)、魚介類(サバ、マグロ)、カカオ豆(ダークチョコレート)などもマグネシウムを含み、ストレス軽減や健康促進に役立つとされています。野菜や魚などから出た煮汁にもマグネシウムが含まれますので、煮物やスープ、鍋物など汁も食べられる料理がおすすめです。
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