私たちの身の回りには「加工食品」が溢れています。その名の通り製造過程で加工されているこれらの食品は、高糖分、高脂肪分、高塩分の傾向があります。人工甘味料、保存料、着色料、香料などの添加物も多く含まれています。
工業的な加工が過度に施された食品を「Ultra-processed food(UPF:超加工食品)」とする分類法があり、これを用いた医学研究もあります。UPFは自然の原材料からかけ離れた成分を含んでおり、高度に精製された食材や添加物が多く使われているため、栄養価が低く、カロリー密度が高い傾向があるとされています。UPFの代表的な例としては以下のようなものが挙げられます。
以前から、加工食品を頻繁に摂取する人は動脈硬化から心臓血管疾患を引き起こすリスクが高いことが指摘されていました。
見栄えや食感、味、保存性などを良くする目的で加工食品に使われている食品添加物には、「リン酸ナトリウム」などリンの化合物が多く含まれています。リン自体は私たちの健康維持に欠かせない必須栄養素の一つなのですが、自然の食材に含まれるリンはその40〜50%程度しか吸収されないのに対して、食品添加物として使用されている無機リンは、ほぼ90%が体内に吸収されてしまいます。このため加工食品を多く飲食することは、リンの摂り過ぎにつながり、様々な健康障害を引き起こすリスクを高めるのです。
少量を食べるのであれば健康障害にはつながりませんので、過剰に怖がる必要はないのですが、無頓着に加工食品ばかり食べている人と、「量と頻度」に気をつけながら食べている人では、将来の病気のリスクに違いが出てきます。
最近の研究では、子どもでも、加工食品を多く食べる子どもは成人の場合と同じように心臓血管疾患につながる代謝の変化が起きることが指摘されています。スペインで3~6歳の未就学児約1500名について調べた研究ですが、UPFの摂取量が多い子どもは肥満になる傾向が強く、空腹時血糖が上昇し、HDLコレステロール(善玉コレステロールと呼ばれる)値が減少する傾向が多く見られました。一方、100gのUPFを同量の未加工または最小限の加工食品に置き換える食生活を続けると、肥満度、空腹時血糖値の減少傾向が見られました。
なお、この研究では、UPFの消費量が多い子どもの母親の特徴として、年齢が若く、体重過多または肥満の可能性が高く、教育レベルと就業率が低い傾向も指摘されました。これは、決して母親が悪者という意味ではありません。しかし、生活を取り巻く家庭環境を考えたとき、「食と健康に関するリテラシーの不足」が子どもにも大きな影響を与えるということを示唆しています。
加工食品は私たちの生活に密着しており、多くの人は「加工食品を避けようと思うと何も食べられなくなってしまう」と諦めにも似た気持ちになるのではないでしょうか。中には、とても意識して有機野菜や非加工食品にこだわる人もいますが、過剰に気にし過ぎるとかえってストレスとなり、暮らしにくさにつながってしまうこともあるかもしれません。
また、自身の食生活で加工食品などから取り入れるリンが多すぎるかどうかは、自分では判断しづらいというのも難点です。もし機会があれば、一度、血液検査でリンの濃度を調べてもらうことをおすすめします。血清リンの理想値は 2.5〜3.5 mg/dl と考えられています。腎臓病など基礎疾患がないのに 4.0 mg/dl 以上のリン濃度がある場合には、食生活を見直してみましょう。
加工食品を絶対に食べてはいけないというわけではありません。重要なのは、その「量と頻度」を考えながら上手に日々の食生活を組み立てることなのです。ご自身の加工食品との付き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。
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