「尿酸」と聞くと「痛風の原因になる厄介者」といったイメージを抱く人が少ないないでしょう。尿酸とは、体を錆びさせる酸化ストレスから守ろうとして、自ら生み出す代謝物です。「錆び止め」となる抗酸化作用を持っており、じつは尿酸自体は目の敵にするような厄介者ではありません。
尿酸値が高い「高尿酸血症」の状態が続くと問題になるのは、余分な尿酸がやがて針のように結晶化して血管や関節などを傷つけ、局所の炎症を引き起こすためです。これが「痛風」発作につながります。足の親指などに、文字通り「風が吹いても痛い」激痛が起こります。
痛風発作を予防するためには、血液中の尿酸値をコントロールしておく必要があります。必ずしも高尿酸血症の人が全員、痛風発作を引き起こすわけではないのですが、一般的には7.0mg/dl以下に維持しておくことが安全とされています。
また、血液中に尿酸を増やさないような生活習慣を維持することが大切ですが、これが「言うは易く、行うは難し」のようです。その理由は、飲酒や肉類などの美食によって尿酸が増えやすくなるからです。おいしいものを食べていたいのが人間の性(さが)でしょう。
食事で「魚卵とビールは控えているが、あとは好きなものを食べ、酒も飲む」という人がいますが、これはどうでしょうか。魚卵とビール、つまり「プリン体の多い食品を控える」という方法です。
尿酸の原料となる物質が「プリン体」です。プリンと呼ばれる化学構造を持った物質の総称で、DNAや細胞のエネルギー源となる物質に含まれていますので、肉類や魚卵など、重量あたりの細胞数が多い食品にはプリン体が多く含まれています。
アジアの黄色人種は欧米人よりも食事で摂取するプリン体が尿酸値を上げやすいという説もありますので、過度の肉食などプリン体の多い食品を控えるというのは、理に適っているようにも思えます。ただし、もともと血液中の尿酸の約80%は体内の新陳代謝によって作られ、食品由来のものは約20%です。それほど神経質に気にする必要はありません。
むしろ、気をつけて欲しいのはアルコールの総量です。「ビールを控えれば他のアルコールは飲んでも良い」と都合よく解釈している人もいるのですが、お酒の種類を問わず、大量のアルコールが尿酸値を上げます。アルコールが体内で分解されるときに発生するアセトアルデヒドという物質が、腎臓からの尿酸排泄を減少させるためです。ですから、尿酸値が高い人はお酒を飲まない、または多くても1日に日本酒換算で1合までに留めておきましょう。
食品中の抗酸化物質の総量と痛風発作との関係について調べた研究があります。それによると「抗酸化成分の多い食品を食べていることが、尿酸を上げず、痛風発作とも無縁になる可能性が高い」と報告されています。体にとって抗酸化成分が不足しているために、自ら抗酸化物質(尿酸)を作り出そうと働いてくれているのだと考えれば、この結果も納得がいきます。
抗酸化作用のある食品の代表は緑黄色野菜です。緑黄色野菜には、ベータカロテンなど様々なポリフェノール類やビタミンEなどが含まれており、体の酸化(錆び)を防いでくれます。新鮮な野菜類に含まれるビタミンCも抗酸化作用を持つ栄養素の代表格です。痛風発作予防のためにもこうした野菜類を積極的に摂りたいものです。
特に、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンと呼ばれる成分は、肝臓に働き、解毒を促進することが知られています。デトックス作用が期待できますので、尿酸値が気になる人、アルコールを飲む機会が多い人には有益な野菜です。
痛風は昔から「帝王病」などと言われ、肉類や飲酒ばかりで野菜を嫌うような偏りのある食生活では尿酸値が上がります。野菜を積極的に摂り抗酸化物質を取り入れましょう。また、水分を十分に摂取して尿酸を溜めずに排泄することも心がけましょう。
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