インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などが流行しています。気温が下がり、空気が乾燥するこの時期は一年で最も感染症が増える時期でもあり、より一層、気をつけたいものです。感染症の予防には、自分自身の免疫機能を高めることが最善策です。このために欠かせない栄養素が「亜鉛」です。
これまでに、「新型コロナ感染者では健常者に比べて亜鉛の血中濃度が約30%低下していた」「亜鉛欠乏状態にある新型コロナ患者は重症化するリスクが5.5倍上昇する」など、新型コロナと亜鉛との関連を示すさまざまな報告がなされてきました。2023年には、新型コロナ患者に対して亜鉛を投与すると死亡率や重症化を軽減できるという研究報告もなされました。
亜鉛は細胞活動の根幹に関わる非常に重要な必須ミネラルです。体内の200種類以上の酵素に関与して、さまざまな代謝を行う中心的な役割をはたしており、生命活動の基盤ともいえる細胞分裂は亜鉛がないと始まりません。そんな亜鉛が不足すれば、粘膜の防御機能が衰え、細菌やウイルスが侵入しやすくなってしまうのです。
また、亜鉛はSOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)という抗酸化酵素の活性にも関与しており、細胞を酸化ストレスから守ってくれる錆止めの働きをしています。脳神経、視力、皮膚や粘膜、前立腺や副腎機能、味覚の維持などあらゆる体の機能に関わっており、亜鉛は人間が生きていくうえで欠かすことのできない存在です。さらに、水銀などの有害金属を体外へ排出する働きもあります。
1日あたりの亜鉛必要量は10mg前後とされています。亜鉛を多く含む食品の筆頭は何といっても牡蠣です。寒い時期は鍋物などで牡蠣を積極的に食べることをお勧めします。他にはナッツや卵などにも比較的多く含まれます。
ただし、牡蠣を毎日食べ続けるわけにもいかず、現代人の通常の食生活では必要量を摂取することは極めて難しいのが実情です。そのため重要な栄養素でありながら、亜鉛は多くの人で不足しています。
また、意識して摂取しているつもりでも、血中濃度は身体の状態によって違ってきます。加齢によって消化・吸収力も低下しますので、高齢者では特に血中亜鉛濃度が低い傾向があります。さらに、年齢に関係なく、アルコールの摂取量が多い人では、亜鉛の血中濃度が低くなるようです。これはアルコールを代謝する際に亜鉛が消費されてしまうためです。
亜鉛不足が気になる人は、サプリメントの形で積極的に補給をすることも検討してみてください。できれば一年に一回は血中濃度の測定を行い、適正にあるか否かの判断をされることをお勧めします。
亜鉛の血中濃度を適正値に保つことは、感染症対策の一つとして重要なポイントです。ビタミンCや、亜鉛と同じく免疫機能の維持に欠かせないビタミンDなど他の微量栄養素も適切に補充しましょう。全身の栄養状態をよくするとともに、活発に運動し、良質な睡眠を十分にとり、感染症に負けない体づくりを心がけてください。
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