SL Creations

「おいしさ」「安心・安全」「健康」を求めるSL Creationsは、
サイエンスに基づいた栄養の知識をお届けします。

プロテインの摂り過ぎは要注意!たんぱく質を考える

栄養バランスの偏りから
ビタミンB群不足に?

栄養バランスの偏りからビタミンB群不足に?

「江戸わずらい」という言葉をご存じでしょうか。江戸時代、参勤交代で地方から江戸に上るとなぜか体調を崩す侍が多かったようです。後世の研究で、これはビタミンB群の不足による現象ではないかと考えられるようになりました。江戸では、ビタミン・ミネラルを含む玄米ではなく白米ばかりを食べるようになり、栄養バランスが崩れてしまったのです。
実は現代においても、このビタミンB群不足は他人事ではありません。ファストフードや加工食品、砂糖のたっぷり入った製品に依存した現代の食生活では、ビタミンB群を含む食品の摂取が減っているだけでなく、必要以上に体から失われている場合もあるからです。いわば「現代型栄養失調」とも言える、栄養バランスの偏りが生じていることに意識を向ける必要があります。

糖質代謝の要はビタミンB1

ビタミンB群の中でも不足しがちなのがビタミンB1です。細胞のエネルギーを作り出すために必須の栄養素ですので、不足すると全身のだるさや不調、神経の痛みが出やすくなります。
江戸わずらいは、まさにこの状態であったと想像できますが、現代では偏った栄養素の食事でB1不足になるだけでなく、必要以上にB1が消耗されてしまう状態に注意が必要です。B1は糖質代謝の要となるビタミンですから、甘いものや炭水化物の摂り過ぎ、お酒の飲み過ぎなど、いわゆる不摂生によってどんどん失われてしまうのです。加えて、利尿剤など医薬品の副作用によって過剰排泄が起きる可能性も高く、透析をしている人では大量の水溶性ビタミンが失われていることも知られています。
疲労感を強く感じているなど、ビタミンB1不足が疑われる人は積極的に補充を心がけましょう。ビタミンB1は豆類やナッツ、糠、全粒粉の小麦、豚肉、アボガドなどに多く含まれています。

ビタミンB2・B3も十分に摂ろう

ビタミンB3も細胞のエネルギーを作るために欠かせない栄養素です。不足すると慢性疲労、頭痛、皮膚トラブルなどの症状が現れます。B3はアミノ酸の一種であるトリプトファンから作られ、健康長寿に関わる物質の材料になるとして最近注目を集めています。トリプトファンを多く含む乳製品、卵、鶏肉、レバーなどをあまり食べない人では不足するリスクがあります。
また、B1もB3も、ビタミンB2があって初めて効率よく働くことができます。いずれも十分に補充したいものです。ビタミンB2はビール酵母やレバー、野菜類、海苔に多く含まれています。
ビタミンB2の働きの特徴は脂肪酸代謝であり、B2が足りないと脂肪を分解する機能が低下します。また唇の端が炎症を起こして切れる「口角炎」もB2不足の典型的な症状です。この他にもさまざまな目の疾患や毛髪のトラブル、消化器の不調などもビタミンB2不足が関与している可能性があります。

現代生活で
不足しやすいビタミンB6

現代生活で不足しやすいビタミンB6

最近はたんぱく質ブームですが、たんぱく質を代謝するのにビタミンB6が不可欠です。例えば、トリプトファンからセロトニン(精神の安定に関わる神経伝達物質)を作るためにはビタミンB6が必要なのですが、たんぱく質(アミノ酸)の摂取量が多いのにB6が少ないとアミノ酸代謝がスムーズに行われず、動脈硬化を増悪させる因子の一つと言われるホモシスティン(悪玉アミノ酸とも呼ばれる)の値が上昇する可能性があります。セロトニンもうまく作れず、不眠、日中の不安感、筋肉痛など、さまざまな症状が誘発されやすくなります。たんぱく質は十分に摂っているのに体調が優れない場合には、ビタミンB6不足を疑ってみましょう。食品ではニンニクがビタミンB6を多く含んでいます。

体内で作れないビタミンB12

ビタミンB12は体内で産生できないため、食品から摂取しなければなりません。高齢者や胃の制酸剤などを服用している人、厳格なベジタリアンなどでは吸収不全や欠乏症が起きることがあります。
ビタミンB12には、神経繊維の周囲を取り囲み、神経の伝達機能を維持するミエリンという成分を作る働きがあります。このためB12欠乏では、神経の機能が十分に維持できなくなる結果、痛みや運動機能障害、視力低下などが起こりやすくなります。また、赤血球を作るという大切な働きもあり、欠乏が長く続くと貧血につながります。食品類でB12を多く含むものは、貝類、魚類、レバー、海苔などがあります。

多種類のビタミンがチームで働く

このほかにも、ビタミンB5、B7も糖質代謝や脂質代謝にとって重要ですし、B9(葉酸)も、特に妊娠期間中は胎児を育てるために通常の倍以上の葉酸が必要として積極的な摂取が勧められています。
たくさんのビタミンB群をご紹介しましたが、ビタミンB群はサッカーチームのように、多種類が連携して機能します。このため、補充する場合にはどれか単体ではなく、ほかのビタミンB群も含まれる形で摂取することが大切です。食品ならさまざまな種類をバランスよく食べること、サプリメントなら総合ビタミン・ミネラル剤が望ましいでしょう。

まとめ

  • 現代型の「栄養の偏り」からくる
    ビタミンB群不足に要注意
  • 糖質代謝によってビタミンB1が失われる
  • ビタミンB1・B3は
    細胞のエネルギーを
    作るために欠かせない
  • ビタミンB2が足りないと
    脂肪を分解する機能が低下する
  • たんぱく質を代謝するのに
    ビタミンB6が不可欠
  • ビタミンB12は神経機能の維持に不可欠
  • 多種類のビタミンが
    チームのように連携して働く