私たちの骨は「鉄筋コンクリート」のような構造をしており、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル成分でできている骨塩の中に、コラーゲン繊維(たんぱく質)が骨組みのように張り巡らされ、強度が保たれています。コラーゲン繊維が十分になければ、骨も折れやすくなってしまいます。
「骨を強くするのはカルシウム」と思っている人は多いですが、カルシウムだけでは骨は強くならないのです。さらに言えば、たとえコラーゲン繊維が十分にあっても、ビタミンの不足や過剰な糖質などの影響で骨が折れやすくなる場合もあります。特定の栄養素をたくさん摂ることが体にいいわけではなく、さまざまな栄養素をバランスよく摂取することがいかに大切か、おわかりいただけるでしょう。
日本では「カルシウムが足りていない」という情報が多く見受けられますが、諸外国ではカルシウム過多が動脈硬化を進めるということが指摘されており、カルシウムの摂り過ぎに警鐘が鳴らされています。そもそも、細胞外液にカルシウムが、細胞内にマグネシウムがあることによって両者がバランスをとって働いているのですが、現代の日本人はマグネシウムが足りていない人が多く、バランスが悪い状態です。さらにカルシウムを摂り過ぎれば、大きくバランスを崩してしまいます。カルシウムの働きを期待するなら、マグネシウムをもっと摂る必要があるのです。
もう一つ、骨を守る大切な栄養素としてすすめられるものが、ビタミンDです。2003年にハーバード大学の研究機関が発表した、「カルシウム、ビタミンD、牛乳を飲むことのいずれが閉経後の女性の大腿骨骨折を予防する効果があるか」を検証した研究があります。約7万人の女性を対象にした、長期間にわたる大規模な研究ですが、この中で唯一、骨折を予防する可能性があると報告されたのがビタミンDでした。ビタミンDは骨の健康だけでなく、免疫の調整など全身の健康状態を保つためになくてはならない重要な栄養素であることがわかり、近年注目されている栄養素です。感染症予防を含めたさまざまな観点からも、ビタミンDを積極的に補充しましょう。
ビタミンDは鮭を筆頭に、魚に多く含まれています。きのこにも多いとされていますが、体内で効率よく代謝されるのは動物性のビタミンD3です。
ビタミンDと並んで、忘れてはならないのがビタミンKです。ビタミンKは動脈の壁からカルシウムを抜き取り、骨へ移動させるという重要な働きをしています。ビタミンKが少ないと、骨からカルシウムが溶け出しやすくなり、動脈の壁にカルシウムが沈着しやすくなると考えられます。このため、ビタミンKを摂取することで骨を丈夫にするだけではなく、動脈効果予防にもつながる可能性があります。
ビタミンKはチーズや納豆に多く含まれています。特に納豆を1日1パック食べる習慣を持つことで、骨粗しょう症予防、動脈硬化予防のほか、腸内環境を整える働きも期待できるでしょう。
プルーンにもビタミンKが含まれています。プルーンは便秘対策になる食品として知られていますが、「1日に100g(約10個)のプルーンを食べていると、閉経後の女性の骨粗しょう症を予防できる可能性がある」という報告もあります。この報告によれば、そのメカニズムは、プルーンに含まれるポリフェノール成分が腸内環境を整えることによって、全身の酸化ストレスや炎症を軽減するためだということです。
プルーンには、ビタミン、ミネラル、食物繊維やポリフェノールなどが豊富に含まれ、骨粗しょう症対策以外にも、血糖値の改善、抗酸化作用、心血管疾患の予防など、さまざまな健康効果が期待できます。健康維持のために積極的に活用したい食品の一つであることは間違いないでしょう。
これらの食品を中心に、さまざまな食材から多種類な栄養素を摂取することを意識してみてください。
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