私たちの骨は新陳代謝を繰り返しています。骨を壊す細胞(破骨細胞)と、新しい骨を作る細胞(造骨細胞)が毎日せっせと働き、数か月から数年で全身の骨が全く新しいものに入れ替わります。しかし、加齢に伴い女性ホルモン・男性ホルモンのバランスが変化してくると、この骨の代謝にも大きな変化が起こります。
女性ホルモンは骨から基質が溶け出すのを防ぐ働き、男性ホルモンは骨を作る造骨細胞を助ける働きをしています。更年期以降の女性では、女性ホルモンと男性ホルモンが一気に低下してしまうため、骨を守る力と骨を新たに作る力の両方が激減してしまうことになります。その結果、骨量が減って骨折しやすくなる「骨粗しょう症」のリスクが高まります。
男性でも40代から50代以降、男性ホルモンの低下は起こりますが、女性のように測定不能域まで急激に下がることはほとんどありません。また、男性の体の中では男性ホルモンから女性ホルモンが作られていますので、生涯を通じて女性ホルモンが枯渇してしまうこともありません。骨粗しょう症が女性に多く、男性に少ないのは、このためです。
男性ホルモン・女性ホルモンの原料になるのは、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)というステロイドホルモンの一種です。このDHEA は20〜30代をピークとして加齢とともに減少していく傾向があります。個人差もありますが、60〜70代では20代の30%程度にまで減少する場合もあります。
性ホルモンの減少による骨粗しょう症を予防するためにも、DHEAの血中濃度を維持し、男性ホルモン・女性ホルモンのレベルを維持するように努めましょう。粘り気のある芋類を積極的に食事に取り入れることで、食事から自然なホルモンの原料を補給することになり、結果としてDHEA、男性ホルモン・女性ホルモンのレベルを維持することが期待できます(「ストレスでホルモンが減る?ホルモンの変化に「ネバネバ芋類」でアプローチ」参照)。
とはいえ、DHEAだけ摂っていれば安心というわけではありません。骨はカルシウム、マグネシウムなどのミネラルのほか、コラーゲン繊維を中心としたたんぱく質によって作られています。よい例えが「鉄筋コンクリート」です。鉄筋コンクリートは、コンクリートの中に鉄筋を入れることによって構造物の強度を高めています。骨も全く同じ構造で、ミネラル成分を中心とする骨塩の中にコラーゲン繊維が骨組みのように張り巡らされることによって、強度が保たれています。もしコラーゲン繊維が十分になければ、コンクリートだけの構造物が簡単に崩れてしまうように、骨も折れやすくなってしまいます。
さらに、十分にコラーゲン繊維があるのに骨が折れやすくなる現象も知られています。この場合、コラーゲン繊維同士が病的にくっついて弾力性が失われることが原因と考えられています。こうした現象は、ビタミンB群の不足や、糖とタンパク質が反応して起きる糖化現象によってもたらされると言われています。
一般的な骨密度測定は骨量(リン酸カルシウムを中心とした骨に多く含まれるミネラル成分)を調べるものなので、コラーゲン繊維が十分にあるか、劣化していないか、などはわかりません。ですから、骨密度測定では問題ないと言われたのに骨折しやすくなってしまう人もいるのです。
骨はミネラル成分だけでなくたんぱく質(コラーゲン繊維)によってその構造が維持されています。日頃からたんぱく質を十分に摂ることを心がけ、ビタミンB群など、さまざまな栄養素をバランスよく摂取するようにしましょう。骨を守る栄養素と食材選びについては、次回に詳しくお伝えします。
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