「ホルモン」と聞くと、どんなイメージを抱くでしょうか。ホルモンとは、体のはたらきを調節する情報伝達物質の総称です。主に副腎などの内分泌臓器や組織で作られ、血流に乗って体のさまざまな部位に届きます。一口にホルモンといっても多種多様で、副腎皮質ホルモン(ステロイド)や、男性ホルモン(テストステロン)、女性ホルモン(エストロゲン、エストラジオール)、血糖値をコントロールするインスリンなどは、その名を知られている代表的なホルモンの一つです。
私たちの体ではいろいろなホルモンが複雑に影響し合うことで健康や免疫力を維持しています。ステロイド製剤の副作用に対する抵抗感が強いためか、薬が必要な場合にも使用をためらう人も見られますが、必要に応じて補充するなどホルモンバランスを適正に維持することは、健康のために極めて重要です。
ここでは、男性ホルモンに焦点を当てて考えてみましょう。
男性ホルモン(テストステロン)は、男性の場合は精巣で、女性は副腎や脂肪で作られています。その特徴は「活動する力を生み出す源」であることです。性機能だけでなく、筋肉を作り、筋力を増やす、決断力や意欲を増強させる、記憶力を維持するなど、日常生活の質を高めるために男性ホルモンが重要なはたらきをしています。
男性ホルモンは男性だけのものではなく、女性の体でも同様に重要なはたらきをしています。男性ホルモンが低下すれば、記憶力の低下、意欲の低下、筋力や筋肉量が減って太りやすくなるといったことが起こりますし、閉経後の女性では、女性ホルモンも男性ホルモンも低下してしまうために骨が弱くなるなど、心身の不調が起きやすくなります。
男性ホルモン・女性ホルモンのもとになるのは「DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)」というホルモンである、ということも覚えておきましょう。DHEAはコレステロールを原料に副腎で作られ、免疫力を高める、発がんを抑制するなどのはたらきがあります。
多くのホルモンは、加齢と共に減少する傾向にあります。DHEAも男女ともに20代が分泌のピークで、加齢とともに減っていきます。一方、健康長寿の人は、このDHEAの値が高いことがわかっています。全ての人にとって「若い体」「太らない体」を維持するために不可欠な「若返りホルモン」と言えます。
ホルモン分泌はストレスの影響によっても変化します。ストレスを受けると、体はコルチゾール(ストレスホルモンと呼ばれる副腎皮質ホルモン)を分泌します。これによって過剰なストレスから心身を守ることができるのですが、一方で、材料であるコレステロールもたくさん消費するため、コルチゾールが大量に分泌されると、DHEAや男性ホルモン、睡眠に関係するホルモン(セロトニン、メラトニン)など、同じくコレステロールを材料とするホルモンが材料不足に陥り、減ってしまうのです。
現代人はストレスによって、特に男性ホルモンの低下が進みやすいとも言われています。1日のうち、男性ホルモンの分泌のピークは朝にありますので、朝、意欲を感じられなくなったら要注意です。
加齢やストレスに負けず、若さと元気を維持するポイントの一つは、男性ホルモンのもとになるDHEAをできるだけ減らさないようにすることです。DHEAは粘り気のある芋類に多く含まれていますので、食事では意識してこれらを摂るようにしましょう。
中でも自然薯は「山薬」という名称で滋養強壮作用のある漢方薬(八味地黄丸や六味丸など)にも含まれています。1930年代に自然薯の研究をしていた米国人研究者が、自然薯に体内のDHEAを増やすディオスゲニンという成分があることを発見し、それ以降、「自然薯を食べると元気になる」と言われるようになり、自然薯と同じ系統の植物にもホルモンに似た作用を持つ物質が多く含まれることが知られるようになりました。
また、鶏肉や豆類などの良質なタンパク質、魚介類などに多く含まれる亜鉛もDHEAの生成を助けますので、日常的に摂りたいものです。糖質やアルコールを摂り過ぎないこと、適切な休養と睡眠をとってストレスをやわらげることも大切です。
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