冷蔵庫に使いかけの調味料がたくさん並んでいませんか?いまは、いろいろな種類の調味料が売られていますね。「〇〇専用」とひとつのメニューに特化した商品もあれば、これ1本で料理の味が決まるというような便利なものも。では、その「味」とはいったい、何の味で、だれの味つけなのでしょうか?
食べたもの、 飲んだものによって得られる感覚が味覚です。味覚には、この連載で取り上げてきた甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の五味のほか、辛味や渋味もありますし、口の中で感じる温度、舌ざわりなども含まれます。味覚を感じるのは舌にある味蕾。これは生まれたばかりの赤ちゃんでも敏感に働いていて、ミルクを替えると急に飲まなくなることがあるのはこのためと考えられています。しかし、残念ながら成長するにつれてその感度 は鈍っていくそうです。だからこそ子どもが小さいうちに、親が確かな味を示し、伝えていくことが大切なんですね。
家庭の料理でめざすのはどんな味でしょうか?もしかしてレストランや和食店の味を思い浮かべていらっしゃいませんか?もちろん、それはとてもおいしいものです。しかし、外食の味を家庭で再現することが家庭料理なのだと思っていらっしゃるとしたら、それは間違いではないかしらと思うんです。簡単な工程で繰り返し同じおいしさに作れること、栄養があって体に安心・安全であること。それが家庭料理です。特別な調味料を使って手間ひまをかけた料理とは違うということをあらためて意識してみませんか。
いろいろな調味料を買いそろえてしまうのは、味つけに自信が持てないからというお話をよく聞きます。家庭料理で味覚をはぐくむために、いわゆる「さしすせそ」の基本調味料や、だしの力を見直していただきたいと思っています。とはいえ、ソースやケチャップを使うこともあります。ただ、いろいろな調味料をたせばたすほど、工程が複雑になり、作る側の心も複雑になります。「めんどう」に思ってしまうんですね。食べる子どもにしても、複雑で濃い味の料理は口に入れただけで満足感を得てしまい、どんな味かを考える余裕をなくします。調味料は多用しないこと。よく吟味して選んだ上質な食材や調味料があれば、シンプルな味つけで充分なんですよ。
浜内 千波さん
「家庭教師のカリスマ」とも呼ばれ、料理のあらゆる知識に精通している人気料理研究家。テレビ、雑誌、講演会での活躍のほか、朝食を紹介するTwitterや料理のコツをYoutubeで配信。また、毎月、「浜内千波ファミリークッキングスクール」のオンライン料理教室も実施中。
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