SL Creations

「おいしさ」「安心・安全」「健康」を求めるSL Creationsは、
サイエンスに基づいた栄養の知識をお届けします。

五味五感を生かした食の知識vol.9

「食材や料理の香りを意識して、
食事の楽しみを増やしましょう」

疲れたとき、一粒のチョコレートを食べただけで少し気分転換になったという経験は、どなたにもあることでしょう。それはチョコの甘味の力です。甘味は五味のなかでも好まれる味。一方で、甘味のある食べ物は肥満につながるので、とりすぎには気をつけなければなりません。

エネルギー補給とリラックス効果

甘味の成分は炭水化物の一種で、代表的なものにショ糖、ブドウ糖、果糖などがあります。これらは、体の中で素早くエネルギーになる即効性があり、体を動かす力になるだけでなく、脳の働きにも大きく作用します。昔から、「朝ごはんはちゃんと食べなさい」といわれるのは、午前中の体と脳の働きを活発にさせるためなのです。また、ブドウ糖にはセロトニンを効率よくつくる働きがあることも知られています。セロトニンは、安心感やリラックスした気分をもたらす物質。だから、甘味は心を落ち着かせる手助けにもなるのです。

どの食べ物が甘い?

砂糖やはちみつだけでなく、野菜にも甘みがあり、かぼちゃやさつまいもはスイーツにも使われるほどです。生では辛みのある玉ねぎも、加熱するとぐっと甘みが出てきます。加熱によって野菜の組織がこわれて水分が失われることで、もともと含まれる甘味成分が凝縮されたり、成分が変化することで食べたときに強く感じるようになるのです。このような味の変化は、料理をただ食べるだけでは子どもにはわからないかもしれません。ぜひ食卓で話題にし、味の比較を体験させてください。子どもにとって、大きな発見になることでしょう。

甘味を生かそう

たとえば、ビーフシチューにはトマトケチャップやソース由来のほのかな酸味があります。そこに玉ねぎの甘みが加わると、2つの味が増強しあい、味が強く、おいしくなる効果が得られます。にんじんのグラッセをシチューに添えるのも、グラッセの甘味とシチューの酸味の相性のよさがあるから。今回のレシピでは、秋冬ならではの味わいを大切にしたいと考え、さつま芋の甘煮を添えてみました。また、もう一品のはちみつトーストに使ったプルーンの酸味は、バナナの甘味を引き立ててくれます。仕上げのはちみつは単なる甘味だけでなく、チーズのうま味と一体となるソースの役割を果たしてくれます。これは砂糖ではできない、はちみつならではの魅力ですね。すこやかな体と脳の栄養、腸内環境を整えるために、甘味を上手に取り入れてみてくださいね。

浜内 千波さん

「家庭教師のカリスマ」とも呼ばれ、料理のあらゆる知識に精通している人気料理研究家。テレビ、雑誌、講演会での活躍のほか、朝食を紹介するTwitterや料理のコツをYoutubeで配信。また、毎月、「浜内千波ファミリークッキングスクール」のオンライン料理教室も実施中。