「子どもは酸味が苦手」といいますが、これは「酸っぱいものは腐っているから危険。だから食べない」という本能的な反応が起こるためといわれています。大人も、熟していない果実の酸味を「まだ食べられない」というシグナルと受け取ります。ただ、大人は酸っぱくても安全な食べ物があることを知っていますね。子どもはまだその判断ができません。酸味のおいしさ、魅力を知るためには、たくさんの食経験を積む必要があるんです。
疲れたり、食欲がないときは、酸味のきいた料理がおすすめといいますね。ほどよい酸味のある料理は、口当たりがよくて食がすすむものです。味わいだけでなく、酸味は唾液の分泌を促して消化を助ける効果が期待でき、かんきつ類などの酸味(クエン酸)は疲労回復に役立つことも知られています。酸味のあるメニューで、これからの暑い季節を乗り切りたいものですね。
酢、レモン、梅干し、ヨーグルトなど、酸っぱい食べ物はいろいろあります。マヨネーズやトマトケチャップにも酸味がありますが、それにもかかわらず、この2つの調味料が子どもに好まれるのはなぜでしょうか?それは、酸味に甘味、塩味、うま味、それに油分などが合わさって、全体に味の調和がとれているからなんです。単独では子どもが敬遠しがちな酸味も、他の味と組み合わせたおいしいバランスを経験すると、だんだんと受け入れ、好きになっていくと思います。
酸味のある調味料の代表、酢を使った料理では、おすしが人気です。ちらしずしや巻きずしは、家庭の行事や週末のちょっとしたごちそうとして作るかたも多いと思います。ちらしずしは食卓が華やぎますし、巻きずしは巻く工程が楽しく、親子で作るのもいいものです。最近は太巻きが人気のようですが、子どもの小さな手には細巻きがつまみやすいですし、口に運ぶにはちょうどいいサイズですね。おすしがおいしい理由のひとつは、ベースになるすしめし用の合わせ酢の酸味と甘味、塩味のバランスがとれているから。もちろん、酢そのものの味わいも大切です。原料や製造法にこだわってていねいにつくられたものは、酸味にとがったところがなく、まろやか。まずは、いま使っている酢の味を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか?
浜内 千波さん
「家庭教師のカリスマ」とも呼ばれ、料理のあらゆる知識に精通している人気料理研究家。テレビ、雑誌、講演会での活躍のほか、朝食を紹介するTwitterや料理のコツをYoutubeで配信。また、毎月、「浜内千波ファミリークッキングスクール」のオンライン料理教室も実施中。
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