食事をするとき、私たちは味覚だけでなくさまざまな五感を働かせています。なかでも視覚は「おいしそう」と感じることに大きくかかわっていて、とくに幼児期はその影響が顕著に表れるといわれます。おいしく食べる力をはぐくむためには、目で見極め、目で味わう力をつけ、親子で共感することも大切ではないでしょうか。
青々とした葉野菜や真っ赤に熟れたトマトは、見るからにおいしそうですね。色の濃い野菜は新鮮で、栄養もしっかりと蓄えられているものです。冷凍の野菜であってもそれは同じ。旬の時季に収穫し、確かな技術で急速に冷凍処理したものは本来の鮮やかな色が保たれ、栄養の損失も少ないそうです。目で見てわかる 食材の色は、新鮮さや栄養価の高さの判断材料のひとつ。いい食品を見極める大切な情報です。
料理を見て「おいしそう」と思うのはどんなときでしょうか?彩り、焼き色、つや、照り、あるいは盛りつけの美しさを 感じたときかもしれません。食経験がそれほど豊富でない子どもがまず 興味を持つのは、やはり色でしょう。料理に赤、緑、黄色、白、茶色などの食材をバランスよく使うと、楽しげで食欲をかきたてます。また、多くの色をそろえることで、全体の摂取量が増えると同時に栄養バランスも 整うというメリットがあり ます。それから、形のインパクトも大切ですね。花型で抜いた野菜、たこさんウインナーなどに子どもは大きく反応します。いつもとはちょっと違う色や形のアレンジは子どもの好奇心をくすぐり、「食べてみたい」という気持ちが生まれます。
子どもが好きなオムライスも、いつも同じでは残念ながら飽きてしまうことがあります。「オムライスはこの具を使って、色と形はこう」という固定観念をお持ちではありませんか?同じ材料を使っても形が変わると、その目新しさが食欲を刺激してくれます。材料だって替えていいんですよ。たとえばトマトケチャップを切らしていたら、使わずに作ってみましょう。「こうでなければならない」ということは料理にはありません。どんな料理でも作る側の親が楽しむ姿勢が、子どもにもきっと伝わるはずです。いつもと違うオムライスは、「目でも楽しむ、味わう」料理になることでしょう。
浜内 千波さん
「家庭教師のカリスマ」とも呼ばれ、料理のあらゆる知識に精通している人気料理研究家。テレビ、雑誌、講演会での活躍のほか、朝食を紹介するTwitterや料理のコツをYoutubeで配信。また、毎月、「浜内千波ファミリークッキングスクール」のオンライン料理教室も実施中。
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