子どもの脳の発達に欠かせないのが五感の刺激だそうです。幼児のころから五感をバランスよく刺激すると、豊かな感情と表現する力、新しいものを生み出す力、危ないことを事前に察知する力などが養われます。日常生活で五感に刺激を与える場面はいろいろありますが、食にまつわるシーンもそのひとつととらえてみませんか。
食卓での家族の楽しい会話は、子どもの食べる意欲を増し、幸せな記憶として残ります。会話だけでなく、調理の音、食器に触れる音に耳を澄ませることも、食体験といえるのではないでしょうか。包丁でトントントンとリズミカルに野菜を切り、電子レンジがチン!と鳴る。鍋で野菜をぐつぐつと煮込む。キッチンには音があふれていますから、いろんな音を親子で聞いてみましょう。「餃子のフライパンからチリチリと音がしたら、もうすぐ焼き上がりね」と擬音(オノマトペ)を積極的に使って、子どもに話しかけてもいいですね。一つ一つは小さなことですが、幼い子どもにとっては初めて聞く音ばかり。どんどんと吸収していくはずです。
音の体験を積み重ねていくと、音で察し、気配を感じる知恵が育ていきます。また、「やかんがシューシュー鳴っている。お湯が沸いた」「あ、お茶碗の音だ。もうすぐごはんができるのかな」といった気づきや想像する力がつきます。そして、おいしそうなにおい(嗅覚)やカラフルな食材の色(視覚)などの刺激とともに、味覚の発達、食への関心へとつながっていくのではないでしょうか。
聴覚を生かした食育は、すぐに成果が表れるものではありません。はっきりとしたゴールが見えないから、親はあきらめたり、流されたりしてしまいがち。「どうか、めげないで」とお伝えしたいですね。また、子どもといっしょにキッチンに立って料理を作るには、それなりの準備も必要で、毎日、献立を考え、買い物に行く手間は大変なことです。そんなとき、冷凍食品やストック食材があれば、気持ちが半分軽くなり、前向きになれるかもしれません。親の姿勢は子どもの心に必ず残りますから、子どもの脳が大きく発達する5〜6歳くらいまでは、どうかがんばっていただきたいなと思っています。
浜内 千波さん
「家庭教師のカリスマ」とも呼ばれ、料理のあらゆる知識に精通している人気料理研究家。テレビ、雑誌、講演会での活躍のほか、朝食を紹介するTwitterや料理のコツをYoutubeで配信。また、毎月、「浜内千波ファミリークッキングスクール」のオンライン料理教室も実施中。
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