SL Creations

「おいしさ」「安心・安全」「健康」を求めるSL Creationsは、
サイエンスに基づいた栄養の知識をお届けします。

五味五感を生かした食の知識vol.3

「野菜嫌いの克服は、
苦味の克服から。
ときには、
おおらかに見守りましょう」

「うちの子はピーマンが嫌いで困ります。どうしたらいいでしょうか」。料理教室の参加者から、こんな質問をよく聞きます。子どもに好き嫌いや食べず嫌いがあると、親は食事のたびにそのことが気になってしまい、なんとか食べさせようと必死にあれこれ工夫します。でも、うまくいかず、ますます食べなくなってしまったということもあるようです。

野菜を嫌う理由

独特の食感や味、においのために野菜を嫌う子どもは多いものです。とくに苦味のある野菜が苦手ですね。野菜に苦味があるのは、その生育過程で虫などに食べられないようにする自衛のためと考えられています。人間も、苦味を体によくないものとして認識します。さまざまな食経験で苦くても健康に影響がないものを知り、やがて苦味もおいしいと感じるようになるのです。子どもがピーマンを嫌うのは本能的な感覚のためと理解できれば、無理強いはできませんね。

ピーマンを食べさせたいのは、
何のため?

栄養をバランスよくとってすこやかに育ってほしいというのは、当然の親心です。ピーマンはビタミンCが豊富な野菜ですが、ビタミンCを含む食べ物はほかにもあります。栄養面でいえば、ピーマンでなければならないということはありません。どうしても食べられないなら、そのぶんの栄養はほかの食べ物から補えばいい。そんなふうに少し角度を変えて考えることができれば、親の気持ちにも余裕が生まれるのではないでしょうか。

好き嫌いの克服は少しずつ

子どもの好き嫌いを認め、甘やかしていいわけではありません。少しずつでも食べられるように、チャレンジし味覚を育てる手助けをしたいものです。嫌いな野菜を細かく刻んだり、カレーに混ぜてみたりと、気づかないように口に運ばせる工夫をしていらっしゃることでしょう。野菜は切ったり加熱して細胞がこわれると、味、香りが立ちやすくなり、苦味も出てきます。口の中でかむごとに苦味が出るので、何度もかまなくてものみ込める薄さ、大きさに切るといいでしょう。砂糖や酢で苦味を緩和させたり、風味のいいごま油でコーティングするのもアイディアです。いい素材と出会い、組み合わせることで、苦手を克服できることもあります。そして「ほら、食べやすくなったね」と話しかけながら、親自身がおいしそうに食べる姿を見せること。子どもが食べられたなら、ほめてあげることも忘れずに。すぐに100%の効果が得られなくてもいいんです。欲張らずに少しずつ進んでいけるといいですね。

浜内 千波さん

「家庭教師のカリスマ」とも呼ばれ、料理のあらゆる知識に精通している人気料理研究家。テレビ、雑誌、講演会での活躍のほか、朝食を紹介するTwitterや料理のコツをYoutubeで配信。また、毎月、「浜内千波ファミリークッキングスクール」のオンライン料理教室も実施中。