現代人は「現代型栄養失調」になりやすいことをお伝えしましたが、その原因の一つは糖質の摂取量が過剰になることです。
ご飯やパン、麺類などの炭水化物、砂糖たっぷりのお菓子や清涼飲料水など、身の回りには糖質たっぷりの食品が溢れ、いつでもどこでも簡単に手に入るようになっています。
そもそも、成人の適正な糖質量は、体を動かす人で1日300g程度、デスクワークで200g程度。やせたいなら150g程度でしょう。
しかし、握りこぶし大(茶碗軽く1杯)のご飯がおおよそ糖質50g、おかずにも糖質は含まれますから、実際には1食だけで150gくらいは食べてしまいます。
カレーライスなら1食約110g、幕の内弁当1つで130〜150gの糖質量があります。よほど気をつけてコントロールしなければ、ほとんどの現代人は糖質過剰に陥りやすいと心得ましょう。
糖質は脳細胞のエネルギー源となりますから、適正量は必要ですが、過剰になると健康を損なうリスクが生じます。 その一つは、高血糖が続くと糖質とたんぱく質が化合して「糖化たんぱく質」が増えることです。 糖化たんぱく質の中でも、正常の状態に戻れなくなってしまった「AGEs(終末糖化たんぱく質)」は様々な細胞障害を引き起こし、血管がダメージを受けて深刻な病気につながったり、老化を促進したりするリスクが高まります。
リスクの二つ目は、血糖値の乱高下を引き起こし、体調不良の原因となることです。血液中に含まれる糖の量(血糖値)が上がると、血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌されます。
これによって血糖値は下がるのですが、インスリンの影響はその後も残るため、数時間後には必要以上に下がりすぎて低血糖状態に陥ってしまいます。この低血糖状態が集中力の低下やだるさなどさまざまな不調の原因となります。
こうした血糖値の乱高下が長期間続くと、やがてインスリンを分泌する膵臓が疲弊してしまい、インスリンの分泌不足や働きの低下が起こります。その結果、糖尿病や動脈硬化、肥満、心臓病、脳卒中、脳機能への影響など、さまざまな弊害を引き起こします。
日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌量が少ないと言われており、同じ量の糖質を食べても高血糖になりやすい体質を持っている人が多い可能性があります。何かを口にするときには、糖質の摂りすぎにならないかどうか、気をつけることが大切です。
糖質の適正量は個人の体質や運動量などによって異なりますが、多すぎても少なすぎてもリスクがあります。デスクワークや毎日運動をしない人で1日150〜200g以内のマイルドな糖質制限を目安にするとよいでしょう。
この根拠は、ハーバード大学が2018年に発表した炭水化物摂取量と死亡率との関連を調べた研究です。
それによると炭水化物からの総エネルギー摂取が50〜55%(炭水化物から食物繊維を除いた糖質量でいうと1日200〜250g)のグループが最も死亡率が低いという結果でした。
すでに糖質過剰のリスクを知って糖質制限を心がけている人もいると思いますが、そうした方でも血液を調べると血糖値が高く出ることがあります。 主食や甘いお菓子は気をつけていても、次のような「隠れ糖質」が盲点になっている場合もありますから、注意しましょう。 いずれも、絶対に食べてはいけないと悪者扱いしてほしいわけではありません。血糖値の乱高下を避けるために、質と量を見極めて上手にコントロールして食べることが重要です。
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