お茶の発祥は古代中国とされています。中国では烏龍茶などの発酵茶を中心に、歴史とともに形を変えながら、お茶を飲む習慣が一般に広がっていきました。
中国から日本にお茶が伝来したときは発酵茶でしたが、その後、日本では独自の発展を遂げ、緑茶が親しまれるようになりました。昔から八十八夜(立春から数えて88日目)に摘んだお茶は上等とされ、縁起物ともされてきました。5月から6月にかけて新緑の季節は、新茶の美味しい季節でもあります。ありがたい日本の恵みを楽しみましょう。
ちなみに欧米では紅茶が親しまれるようになりました。どれも同じ「茶の木」で、葉に含まれるタンニンが酵素の力で自然発酵するとウーロン茶に、より発酵が進めば紅茶になります。
緑茶の健康効果については、日本最古の医書である『医心方』にすでに記載されており、平安時代には「薬」としての効能が知られていたようです。現代でも緑茶については医学研究が盛んに行われ、抗酸化作用、動脈硬化予防、免疫力増強、がん予防、脂肪燃焼、認知機能のサポートなど、様々な効用が知られています。
こうした健康効果をもたらす最大の成分は、ポリフェノールの一種である、カテキンやエピガロカテキンガレート(EGCG)とされています。これらの緑茶に特有のポリフェノールには内臓脂肪を減らす働きがあることも報告され、脂肪燃焼作用をうたった市販の緑茶ドリンクが増えています。また、インスリンの感受性を向上させる働きも報告されており、血糖コントロールや糖尿病予防にも役立つのではないかと期待されています。
さらに注目すべきは、EGCGに抗ウイルス作用があることです。まだ確実な根拠とまでは言えませんが、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスへの有効性を示す報告もあります。
脳機能への作用については、リラックス効果をもたらすと言われているアミノ酸の一種、テアニンが注目されます。テアニンには、GABA(ガンマ-アミノ酪酸)、ドーパミン、セロトニンといった気分を高める脳内物質を増加させる作用があると言われています。
さらに、緑茶が心筋梗塞や脳血管障害など、動脈硬化性の疾患のリスクを軽減するメカニズムには、ポリフェノールの持つ抗酸化作用だけでなく、緑茶の成分であるクロロフィルに含まれるマグネシウムの働きがあると考えられています。
人間の体では様々な成分が相互に作用しあっているため、それほど単純なメカニズムではなく、難しく感じるかもしれません。いずれにしても、緑茶には「薬」として伝わったほどの薬効があります。緑茶を飲むという行為は、日本人の食習慣の一部として溶け込んでおり、文化として昇華しています。これからも日本人として大切にしていきたい習慣と言えるでしょう。
緑茶の健康効果を活かすには、「1、農薬を極力使わない質の良い茶葉を選ぶこと」、「2、日常的に1日3〜5杯程度」を参考に考えられるとよいでしょう。爽やかな新茶の美味しさを味わってみてください。
Related Article