「老化現象は誰もが避けられないから仕方がない」と思っていませんか。同じ年齢なのに体調が悪く老けて見える人もいれば、若々しく元気な人もいるのはなぜでしょうか。じつは老化現象のなかにも、加齢によって避けがたい老化と、対策できる老化があります。食事をはじめ、生活習慣を見直すことで、かなり老化にブレーキをかけることができます。
老化を進める大敵の一つが「酸化」です。酸化とは「体のサビ」のことです。鉄などの金属が長く外気にさらされていると酸素と反応してボロボロにさびてきますが、これと同じような現象が体でも起こっています。
体は食べ物から取り込んだ糖質や脂質に酸素を反応させて燃やすことでエネルギーを作り出していますが、このときにエネルギーとともに「活性酸素」も発生します。自然な反応ではあるのですが、活性酸素が過剰になると細胞が酸化によって働きを失い、本来の役目を十分にはたせなくなります。これが体のサビにつながります。
この体のサビを抑える方法の一つが「抗酸化物質を摂取する」ということです。抗酸化物質とは文字通り、酸化に対抗する作用(抗酸化作用)を持つ物質。カロテン(ビタミンA)、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミンのほか、フラボノイド、ポリフェノールなどのファイトケミカルにも抗酸化作用があります。
抗酸化物質は、ビタミンCのような水溶性のものと、カロテンやビタミンEのような脂溶性のものに大別されます。脂溶性の抗酸化物質の代表がカロテンです。カロテンという名前は「キャロット(carrot)」という英語に由来するように、鮮やかなオレンジ色が特色です。ニンジン以外では、サツマイモ、マスクメロン、卵黄などに含まれています。脂肪組織が黄色に見えるのもカロテンが貯蔵されている表れです。
このカロテンについて、最近、注目すべき研究が発表されました。45歳以上の約7000名の男女を対象に、平均17年間経過観察を行ったこの研究では、「カロテンの血中濃度が高いほど、認知症になりにくい傾向がある」ということが明らかにされています。カロテンを積極的に摂取することは、認知症予防にとっても欠かすことのできない生活習慣といえそうです。
抗酸化作用を期待して野菜を積極的に食べている人は意外と少ないかもしれません。
特にニンジンはカロテンを大量に含むだけでなく、食物繊維、ビタミンB群、ビタミンC、鉄分、カリウム、カルシウムなども多く含まれている栄養素の宝庫です。昔から民間療法として疲れ目、肌荒れ、冷え性、かぜ、高血圧、便秘、下痢などの予防・改善にも用いられてきました。年中入手できる手軽な〝若返り食材〟ですから、意識して積極的に食べましょう。
土壌の変化もあり、野菜類に含まれるビタミンやミネラルなどの含有量は、50年前の2〜3割程度に減少しています。自分では十分な野菜を食べているつもりでも、栄養素に関してみると十分に摂れていないかもしれません。カロテンやビタミンEなど脂溶性の栄養素は、炒め物料理にしたり、サラダにドレッシングを活用したりと、油と一緒に摂ることで吸収率が高まります。量をたくさん食べるだけでなく、調理の仕方も工夫して、効率よく摂取しましょう。
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