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自分の貯蔵鉄量を知って過不足なく鉄を摂ろう

鉄はエネルギーを作り出すのに
欠かせないミネラル

鉄は体にとって欠かせないミネラルの代表格です。酸素を全身の組織へ運び、細胞のエネルギーを作り出す過程でとても重要な働きをしています。酸素を運ぶのは血液中の赤血球ですが、赤血球の中のヘモグロビンというたんぱく質に存在する鉄が酸素と結びついて全身に運ばれます。ですから、ヘモグロビンが減少した貧血の状態だと酸素を十分に運ぶことができず、全身が酸欠状態となります。また、細胞内でエネルギーを作り出す酵素にも鉄が含まれています。そのため、鉄が不足するとエネルギーをうまく作り出せず、疲れやすい、だるい、冷え性など、さまざまな不調が現れることになります。心臓や筋肉などにも鉄が存在していますので、全身の機能にも影響を及ぼします。

鉄欠乏は全身が
エネルギー不足に

こうした重要な働きをしている鉄が不足すると、ヘモグロビン低下を招き、鉄欠乏性貧血につながります。特に閉経前の女性は、毎月の月経で20〜140mlの血液が失われており、潜在的な鉄欠乏状態になりやすいと言えます。妊娠・出産ではさらに鉄の需要が高まります。疲れや冷え、めまい、片頭痛などの不調を訴える女性が多いのは、鉄不足からエネルギー産生が低下しているのかもしれません。貧血症状だけではなく、イライラやうつなど情緒の不安定にもエネルギー不足が影響している場合があります。思い当たる人は、鉄を多く含む食品やサプリメントから積極的に鉄分を補充しましょう。
鉄が豊富な食品は、肉、魚、卵、レバー、大根菜、小松菜、ほうれん草などですが、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」の方が、植物性食品の「非ヘム鉄」より吸収率が良いと言われています。肉の赤身やレバー、魚の血合いなど「加熱すると赤色から茶色に変わるもの」を覚えておくとよいでしょう。

閉経後女性と男性は
鉄過剰に要注意

一方、閉経後の女性やほとんどの男性では鉄過剰になり、体内の酸化反応を促進して動脈硬化などの老化現象を進めるリスクがあります。鉄が多すぎるために体が錆びやすくなってしまうのです。その場合、逆に上記のような鉄分を多く含む食品は避けなければなりません。自分の鉄の過不足を知って、適正な量を維持することが大切になります。

フェリチンの値をチェックしよう

鉄分の過不足を知るには、一度「フェリチン」という鉄を蓄えるたんぱく質の指標を調べることをおすすめします。一般の健康診断で調べる「血清鉄」が財布の中のお金だとすると、フェリチンは貯金残高のようなもの。血清鉄が正常でも貯蔵鉄は欠乏していることもあり、体に蓄えられている鉄分量の目安として、フェリチンはより正確な指標になります。鉄不足の状態では低値、過剰状態では高値の傾向が見られます。フェリチンの最適な値については諸説ありますが、100 ± 20 ng/mlを目安に考えればよいでしょう。200 ng/mlを超えると動脈硬化のリスクが増えると言われていますので注意しましょう。
なお、フェリチンを調べる機会がない場合は、血液検査の項目一つであるMCV値(平均赤血球容積)も目安になります。正常範囲は90〜100です。この値が90を下回るようであれば、鉄欠乏が隠れている可能性がありますので、積極的に鉄を含む食品やサプリメントで補充することをおすすめします。まずは自分自身の現状を知って、的確に管理していきましょう。

まとめ

  • 鉄は酸素を運んだり、エネルギーを作り出すのに
    欠かせないミネラル。
  • 鉄不足は貧血になり、疲れやすい、だるいなどの
    不調が現れる。
  • 女性は月経で鉄欠乏状態になりやすい。
  • 肉、魚、卵、レバーなどから鉄分補給を。
  • 鉄が過剰になると老化を促進するので注意。
    適正な量を維持することが大切。